江戸時代のユーモアセンスを一部紹介します。ダジャレ、謎掛け、落語などの昔ながらのユーモアセンスに通ずるものがあります。
【小便】
雪の夜中、小便つまりて目ざめ、起きて立ち出で、
雨戸開けにかかったところ、凍りついて、いかなこと明かず。
しかたなければ、敷居へかがんで小便をたれかけ、さて明けてみれば、
氷とけて、がらりと明いたり。「よし」と言いて出でたところが、何も用なし。
【明和九年刊「鹿の子餅」】
[江戸っ子が放つ下ネタ]
娘子の 裾をめくれば富士の山
甲斐でみるより 駿河一番
太田濁山人
*解説
一文に二重の意味を持たせています。
ひとつは[嗅いでみるよりスルがいい ]の意味
ふたつめは、観光名所地名「甲斐」より「駿河」で富士山を見た方がいいっていう意味です。
【雁首(がんくび)】
お姫様、庭のけしきを眺めて、たばこをあがる。
折りふし、空を雁が渡るゆへ、お姫様「あれを見や。局、がんが通る」とおっしゃった。
局「がんは雁(かり)とおっしゃるがよふござります」と申し上げた。
お姫様、吸いがらをはたくとて、雁首(がんくび)がぬけて灰ふきの中へおちた。
「これ、灰ふきの中へかりくびがおちた」
【泣声】
門番の嬶(かかあ)が毎晩外へ聞へるほどに泣くゆへ、殿様よりいろいろ御内証にて、
一夜嬶をお借りなされ、取らせられ御覧あるに、少しも泣かざれば、ご不審にて、
門番を召寄せられ「おれがしては少しも泣かぬが、其方は薬でも付けるか、
大道具か上手か、どうして泣かせる」とのお尋ね。
「ハイ、泣きまするは、私でござりまする。」
【蛸(たこ)】
蛸、あまりの暑さに、橋の下へ出て、昼寝をしている。
猫見つけ、足を七本食い、一本残しておく。蛸目をさまし、
「名無三(しまった)、足を食われた。かなしや」と、向こうを見れば、
猫、そら寝いりをしてゐる。蛸、川へまきこまんと、一本の足で、ぢゃらす。
猫「その手は食わん」
【貧乏神】
だんだんと貧乏になるにつけて「これは貧乏神を祭るがよい」と、
わが食ひものもくはずに馳走する。なほなほ貧乏になれば腹を立て
「コレ貧乏神、これ程に馳走するに、なほなほ貧乏にするはつまらぬ」と、
張肘をすれば、貧乏神「あまり馳走で、家内引越した。」